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池波正太郎 辰巳四郎 梅安最合傘 仕掛人・藤枝梅安 講談社文庫
カバー装画 辰巳四郎

 

命の恩人が敵持ちの極悪人と知って、梅安の気持ちは複雑微妙。だが、目を覆う悪逆ぶりに心は決まる。“恩人”を仕掛ける表題作。仲間の剣客小杉十五郎を狙う浪人を逆に葬る「梅安流れ星」。仕掛けの現場を見られて苦境に陥る「梅安迷い箸」他三編。凄絶な死闘と人情の機微を描いて一気に読ませるシリーズ第三集。(講談社文庫 裏表紙から)

 

<収録>
梅安鰹飯
殺気
梅安流れ星
梅安最合傘
梅安迷い箸
さみだれ梅安

 


 

ネタバレなしの読後感想

金で雇われる殺し屋として、映画やテレビドラマでも人気を博した仕掛人・藤枝梅安。鍼医として病を治して人を助ける顔と、同じ針で殺人を請け負う顔をもつ不条理を抱える生き方がどのようなものなのか想像がつかない。勧善懲悪の考えに立てば、罰せられ忌み嫌われてもおかしくはない存在なのに、“悪い奴” だけを殺すので必要悪ではないかと、なんとなく認めてしまう存在、たとえ殺したのが命の恩人であったとしても。称賛されるダークヒーローでもなく、冷血な殺人鬼でもない。仕掛人であっても、友だち思いの頼りになる好人物でさえある。
葛藤と闘い、依頼者との約束を果たし、いつ極刑を受けても良いと覚悟をいだきながらも心を削り取られていく姿に同情をも覚える。
同じ池波小説の主人公である長谷川平蔵や秋山小兵衛・大治郎親子の真反対にいる存在ではあるが、市井に隠れる悪を倒す姿はいつまでも共感を得続けるのではないかと思う。
娯楽作品として、上出来の一冊です。

 


 

多くの時代劇の原作者となった、稀代の時代小説家です。
「必殺仕事人」、「鬼平犯科帳」、「剣客商売」がおなじみですが、主人公や登場人物に愛着がわくような人物設定が見事です。ですから、ともすればワンパターンになりかねない殺し、捕り物、剣劇のテレビドラマになっても、飽きがこないのではないかと思います。
歴史小説家としては、真田家を様々な角度から描いています。作者が、真田家について深く研究をした結果であることは、容易に想像がつきます。

 


 

<池波正太郎さんの紹介>
1923(大正12)年、東京に生まれる。1955年東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、60年第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。77年第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。作品に「剣客商売」「その男」「真田太平記」“必殺仕掛人”シリーズ等多数。

 


 

池波正太郎さん その他の文庫本

戦国幻想曲
英雄にっぽん
編笠十兵衛
まぼろしの城
あほうがらす
あばれ狼
剣客商売
侠客
おれの足音 上・下
剣客群像
闇の狩人 上・下
上意討ち
男振
闇は知っている
さむらい劇場
蝶の戦記 上・下
鬼平犯科帳 1
真田騒動 恩田木工
堀部安兵衛 上・下
忍びの女 上・下
炎の武士
殺しの掟
梅安乱れ雲 仕掛人・藤枝梅安
まんぞくまんぞく
むかしの味
剣客商売 陽炎の男
旅路 上・下
雲霧仁左衛門 前・後
江戸の暗黒街
忍者丹波大介
夜の戦士 上・下
忍びの風 一・二・三
忍者群像
火の国の城 上・下
剣の天地
食卓のつぶやき
仇討ち
剣客商売 新妻

 


 

池波正太郎記念文庫

 

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JR鶯谷駅からゆっくり歩いて20分ほどの所にある「池波正太郎記念文庫」。ガラス張りの台東区立中央図書館の1階の一隅にある。今年(2022年)が池波正太郎さんの生誕百年とあってか、公営の施設にも関わらず少し力が入っているように感じる。
入場は無料。撮影は禁止。著書、直筆の原稿などが場所柄か少し窮屈そうに展示されている。
池波正太郎さんが描いた絵もある。きっと短時間にササッと書かれたのであろうが味がある。
池波マニアは行くべきです。

 

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