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池波正太郎 竹内和重 忍者群像 文春文庫
カバー装画 竹内和重

 

戦国時代の末期、忍者同士の義理も消え、味方の忍者達でさえ手柄を争うためには殺し合うことも平気、裏切りも寝返りも常識になっていた。その乱世のなかで、“生きていた” 明智光秀の首を狙う忍者小五郎のすさまじい執念を描いた「首」をはじめ、「鬼火」「やぶれ弥五兵衛」「寝返り寅松」「闇の中の声」「先陣眼鏡」「槍の忠弥」の7篇。(文春文庫 裏表紙から)

 

<収録>
鬼火

寝返り寅松
闇の中の声
やぶれ弥五兵衛
戦陣眼鏡
槍の忠弥

 


 

ネタバレなしの読後感想

戦国時代の末期に陰の活躍をした忍者を主人公とした短編を集めた本です。『鬼火』は、戦乱後に闘いで斃した忍者の復讐を受ける元忍者の話です。鍛錬を忘れた忍者は唯の人か・・・・。
『首』は、仕留めたはずの明智光秀がまだ生きていると知らされた忍者の話です。冷血であるべき忍者がみせる義理がたさは池波小説の特徴かもしれない。
『寝返り寅松』は、命より敵将の家臣となった忍者が、潜入先の主人に惚れ込んだ末に元の主家を裏切り主人を助ける話です。忍者も人の子。
『闇の中の声』は、真田幸村に仕える忍者によって翻弄される武士を描いた話です。忍者の戦闘能力の高さと神出鬼没さは、腕に覚えのある武士をも凌ぐ。
『やぶれ弥五兵衛』は、旧主君の嫡嗣豊臣秀頼をなんとかして家康の手から守ろうとする加藤清正を取り巻く敵味方の忍者たちの話です。大坂の役の前に51歳で清正が急逝したことを題材にした筋立てがみごとです。
『戦陣眼鏡』は、江戸幕府が開かれ戦乱のない世の中になっても忍者は活躍をしている。潜入先の主人の天衣無縫で時代錯誤な行動に戸惑う忍者を描いています。いい人たちが作り出すハチャメチャな展開が楽しいです。
『槍の忠弥』は、由井正雪の乱に加担した丸橋忠弥と正雪を探る忍者を描いています。平安な時代では潜入捜査官のような働きだったのだろうか。
海外からも高い人気を得ている忍者ですが、池波正太郎さんが描く忍者は身体能力抜群の心を見せない諜報・戦闘マシーンではなく、あれこれと心を悩ませる人として見ることができ、殺伐とした気分にさせられることはないです。

 


 

多くの時代劇の原作者となった、稀代の時代小説家です。
「必殺仕事人」、「鬼平犯科帳」、「剣客商売」がおなじみですが、主人公や登場人物に愛着がわくような人物設定が見事です。ですから、ともすればワンパターンになりかねない殺し、捕り物、剣劇のテレビドラマになっても、飽きがこないのではないかと思います。
歴史小説家としては、真田家を様々な角度から描いています。作者が、真田家について深く研究をした結果であることは、容易に想像がつきます。

 


 

<池波正太郎さんの紹介>
1923(大正12)年、東京に生まれる。1955年東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、60年第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。77年第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。作品に「剣客商売」「その男」「真田太平記」“必殺仕掛人”シリーズ等多数。

 


 

池波正太郎さん その他の文庫本

戦国幻想曲
英雄にっぽん
編笠十兵衛
まぼろしの城
あほうがらす
あばれ狼
剣客商売
侠客
おれの足音 上・下
剣客群像
闇の狩人 上・下
上意討ち
男振
闇は知っている
さむらい劇場
蝶の戦記 上・下
鬼平犯科帳 1
真田騒動 恩田木工
堀部安兵衛 上・下
忍びの女 上・下
炎の武士
梅安最合傘 仕掛人・藤枝梅安
殺しの掟
梅安乱れ雲 仕掛人・藤枝梅安
まんぞくまんぞく
むかしの味
剣客商売 陽炎の男
旅路 上・下
雲霧仁左衛門 前・後
江戸の暗黒街
忍者丹波大介
夜の戦士 上・下
忍びの風 一・二・三
火の国の城 上・下
剣の天地
食卓のつぶやき
仇討ち
剣客商売 新妻

 


 

池波正太郎記念文庫

 

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JR鶯谷駅からゆっくり歩いて20分ほどの所にある「池波正太郎記念文庫」。ガラス張りの台東区立中央図書館の1階の一隅にある。今年(2022年)が池波正太郎さんの生誕百年とあってか、公営の施設にも関わらず少し力が入っているように感じる。
入場は無料。撮影は禁止。著書、直筆の原稿などが場所柄か少し窮屈そうに展示されている。
池波正太郎さんが描いた絵もある。きっと短時間にササッと書かれたのであろうが味がある。
池波マニアは行くべきです。

 

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