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山本周五郎さんの紹介
1903−1967年、山梨県生まれ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店の徒弟として住み込む。1926(大正15)年4月『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。『日本婦道記』が ’43(昭和18)年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。 ’58年、大作『樅ノ木は残った』を完成。以後、『赤ひげ診療譚』(‘58年)『青べか物語』(’60年)など次々と代表作が書かれた。(新潮文庫)

 


 

朝顔草紙

山本周五郎 朝顔草顔_2213
カバー装画 田渕俊夫

 

顔も見知らぬ許婚同士が、十数年の愛情をつらぬきとおし、藩の奸物を討って結ばれるまでを描いた『朝顔草紙』。徳川四天王、本田平八郎と同姓同名の臆病な青年武士が、戦場で名乗りをあげるたびに敵の第一目標とされ、あわてて逃げ出すという滑稽な設定の『違う平八郎』。いずれ劣らぬあわて者同士主従の不思議な心の通いあいを描いた『粗忽評判記』。ほかに『義理情け』など全12編。(新潮文庫 裏表紙から)

 

<収録>
・無頼は討たず
・朝顔草紙
・違う平八郎
・粗忽評判記
・足軽奉公
・義理なさけ
・梅雨の出来事
・鍔鳴り平四郎
・青べかを買う
・秋風の記
・お繁
・うぐいす

 


 

ネタバレなしの読後感想

 

予想どおりのハッピーエンドあり、あっと思わせるエンディングあり、“あとはご想像のままに” というように余韻をもたせた終わり方ありと、それぞれが山本周五郎らしい作品であり楽しませてくれる。時代も戦乱のときもあれば戦後の混乱期もありで、作者の見識の広さと器用さに驚かされる。
『青べか物語』につながる『青べかを買う』や『お繁』もいいが、『無頼は討たず』がお気に入りです。やくざの看板は侠気だとばかりに書かれた小説が多い中で、かたぎがヤクザのそれを上回る侠気を通すこの作品に、爽快さとともにヤクザに人生を振り回された男が感じたであろう “やるせなさ” を思う。作者の眼は暖かくもあり厳しくもある。そして、諦めや達観をも作品の中に感じることもある。
山本周五郎は、人の情緒を揺さぶる作家なのかもしれない。

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髪かざり

山本周五郎 髪飾り20230311094610
カバー装画 牧 進

 

太平洋戦争中から終戦直後にかけて、著者は〈日本婦道記〉と題した短編を発表し続けた。初期の代表作となったこのシリーズには、未曾有の非常時にあって、古来、戦場の男たちを陰で支え続けてきた日本の妻や母たちの、夫も気づかないところに表われる美質を掘起こしたいとの願いが込められていた。本書には、「忍緒」や「二粒の飴」など、文庫未収録の本シリーズ作品のすべて、17編を収録。(新潮文庫 カバー装画から)

 

<収録>
笄堀  (「婦人倶楽部」昭和十八年一月号)
忍緒  (「婦人倶楽部」昭和十八年二月号)
襖   (「婦人倶楽部」昭和十八年三月号)
春三たび  (「婦人倶楽部」昭和十八年四月号)
障子  (「婦人倶楽部」昭和十八年六月号)
阿漕の浦  (「ますらを」昭和十八年六月号)
頬  (「婦人倶楽部」昭和十八年九月号)
横笛  (「婦人倶楽部」昭和十八年十月号)
郷土  (「婦人倶楽部」昭和十八年十一月号)
雪しまく峠  (「婦人倶楽部」昭和十八年十二月号)
髪かざり  (「婦人倶楽部」昭和十九年一月号)
菊の系図  (「婦人倶楽部」昭和十九年三月号)
壱岐ノ島  (「婦人倶楽部」昭和十九年五月号)
竹槍  (「婦人倶楽部」昭和十九年六月号)
蜜柑畑  (「婦人倶楽部」昭和十九年七月号)
二粒の飴  (「婦人倶楽部」昭和二十年二月号)
萱笠  (「菊屋敷」昭和二十年十月刊 初収)

 


 

ネタバレなしの読後感想

 

<収録>にあるように、第二次世界大戦中の劣勢から敗色が濃くなった時期に書かれている作品と敗戦直後に書かれたものを集めた短編時代小説集です。ストーリーの主幹をなすのは全て女性。立場をわきまえて忠義を尽くす女性、信念を全うしようとする女性など多くの人から理想とされるような女性ばかりです。
収録された作品のうち、戦中に書かれたものを読むと「銃後の守り」という言葉が思い起こされる。戦地へ赴いた夫の不在を守るという意味だが、当時の世相から見れば戦意高揚のために出版社から書いて欲しいと頼まれたのではないかと想像される。全体に教育・教訓めいたものを感じてしまう。出版の時期を追うごとに、段々と紙数が減っていくのをみると雑誌に充てられる紙の量が減っていっていることも窺える。
一転戦後の作品となると、戦場で逝ってしまった夫の家と親を守るけなげな女性が描かれている。これには教育的な色合いはない。
全体に筆者の優しい目線が感じられます。

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おごそかな渇き

山本周五郎 おごそかな渇き 
カバー装画 牧 進

 

長年対面しつづけた宗教的課題を取り上げ、“現代の聖書”として世に問うべく構想を練りながらも絶筆となった現代小説『おごそかな渇き』。ほかに“下町もの”の傑作『かあちゃん』『将監さまの細みち』『鶴は帰りぬ』、“武家もの”の名品『紅梅月毛』『野分』『蕭々十三年』、“こっけいもの”の『雨あがる』、“メルヘン調の『あだこ』『もののけ』と、周五郎文学のさまざまな魅力を一冊に収めた。(新潮文庫 カバー裏表紙から)

 

<収録>
蕭々十三年
紅梅月毛
野分
雨あがる
かあちゃん
将監さまの細みち
鶴は帰りぬ
あだこ
もののけ
おごそかな渇き

 


 

ネタバレなしの読後感想

 

山本周五郎さんの絶筆となった未完の現代小説である表題作『おごそかな渇き』を含む10編の短編小説が収録されています。
忠義心が強い武士を描いた『蕭々十三年』、武士の馬への愛情を描いた『紅梅月毛』、仕官を望む武家の夫婦の信愛を描いた『雨あがる』などは、著者らしい人情ものだと思います。
変わり種は、『もののけ』。平安時代を舞台としていると思いますが、「日本昔ばなし」に出てきそうなストーリーが印象的です。

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日日平安

山本周五郎 日日平安
カバー装画 安里英晴

 

お家騒動に遭遇したのを幸いに、知恵を絞り尽くして食と職にありつこうとする主人公の悲哀を軽妙に描き、映画「椿三十郎」の原作にもなった「日日平安」をはじめ、男勝りの江戸のキャリアウーマンが登場する「しゅるしゅる」、若いふたりの不器用な恋が美しい「鶴は帰りぬ」など、若者たちを主人公に据えた時代小説全六篇を収録。山本周五郎ならではの品のいいユーモアに溢れ、誇り高い日本人の姿が浮かびあがるオリジナル名作短篇集。(角川春樹事務所(ハルキ文庫) カバー裏表紙から)

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