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<池井戸潤さんの紹介>
1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学卒業。98年『果つる底なき』(講談社文庫)で江戸川乱歩賞、2010年『鉄の骨』(講談社文庫)で吉川英治文学新人賞、11年『下町ロケット』(小学館)で直木三十五賞を受賞。
主な作品に、『オレたち花のバブル組』『オレたちバブル入行組』『シャイロックの子供たち』『株価暴落』『民王』(文春文庫)、『銀行総務特命』『銀行狐』『BT‘63』『不祥事』『空飛ぶタイヤ』(講談社文庫)、『最終退行』『ようこそ、わが家へ』(小学館文庫)、『金融探偵』(徳間文庫)、『ルーズヴェルト・ゲーム』(講談社)、『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社)、『七つの会議』(日本経済新聞出版社)などがある。
オレたちバブル入行組
カバー装画 木内達朗
大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の半沢。支店長命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産した。すべての責任を押しつけようと暗躍する支店長。四面楚歌の半沢には債権回収しかない。夢多かりし新人時代は去り、気がつけば辛い中間管理職。そんな世代へエールを送る痛快エンタメ。(文春文庫 裏表紙から)
価格:770円 |
ようこそ、わが家へ
カバー装画 姫野はやみ
真面目だけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が “身近に潜む恐怖” を描く文庫オリジナル長編。(小学館文庫 カバー裏表紙から)
ネタバレなしの読後感想
いつの世にもいる粘着質の人。恨まれるにしろ好かれるにしろ、このような人と付き合うのは厄介の種を背負い込んだようなものである。前者は執拗な嫌がらせなどによる攻撃。後者は身の毛もよだつようなストーカー行為。
この小説は、ちょっとした正義感から起こした行動が不安な日々を招いてしまったという、どの人にもどの家庭にも起こりえる災難とその解決を描いている。
見えざる相手を探す困難。全く役に立たない警察。一般家庭が背負うには余りにも重い。
テンポよく進む展開、幾筋にも広がるストーリーなど十分に楽しめる小説です。
価格:935円 |
株価暴落
カバーイラスト 木内達朗
巨大スーパー・一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、一風堂の巨額支援要請をめぐって、白水銀行審査部の坂東は企画部の二戸と対立する。一方、警視庁の野猿刑事にかかったタレコミ電話で犯人と目された男の父は、一風堂の強引な出店で自殺に追い込まれていた。傑作金融エンタテイメント。(文春文庫 カバー裏表紙から)
価格:737円 |
民王
カバーイラスト 唐仁原教久
「お前ら、そんな仕事して恥ずかしいと思わないのか。目をさましやがれ!」漢字の読めない政治家、酔っぱらい大臣、揚げ足取りのマスコミ、バカ大学生が入り乱れ、巨大な陰謀をめぐる痛快劇の幕が切って落とされた。総理の父とドラ息子が見つけた真実のカケラとは!? 一気読み間違いなしの政治エンタメ!(文春文庫 カバー裏表紙から)
価格:726円 |
シャイロックの子供たち
カバーイラスト 木内達朗
ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪・・・!? “たたき上げ” の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績・・・ 事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。二転三転する犯人捜し、組織の歯車の中でリアルな生が交差する圧巻の金融クライム・ノベル!(文春文庫 カバー裏表紙から)
<目次>
第一話 歯車じゃない
第二話 傷心家族
第三話 みにくいアヒルの子
第四話 シーソーゲーム
第五話 人体模型
第六話 キンセラの季節
第七話 銀行レース
第八話 下町蜃気楼
第九話 ヒーローの食卓
第十話 晴子の夏
ネタバレなしの読後感想
表題にある「シャイロック」はシェークスピアが書いた『ベニスの商人』の登場人物であるユダヤ人の金貸しの名前です。強欲で無慈悲な拝金主義者として描かれており、後にドイツのヒットラーによるユダヤ人嫌い、排斥の遠因となったとも言われる強烈な人物です。金貸し=銀行員としてこの小説の舞台の銀行の象徴として取り入れられている。
都市銀行の一支店の人物を描いたオムニバス形式の描かれ方ですが、途中から軸となるテーマが現れ始め興味がこの一転に集約されてくる。
毎日毎日目の前を、そして手の中を大量のお金が「商品」として流れていく状況は金融業界を経験していない人には理解できないかもしれないが、時に異様さを感じさせる。入行の時に “お金はものを買うためのものではなく「商品」だ” と教えられその通りに慣らされるが、ふとした瞬間に “ものを買うためのそれ” に姿を変える。今でこそ銀行内の犯罪が起こりにくい仕組みになっているが、行員がシャイロックへと姿を変える温床は残されている。また、ノルマを達成できない部下に罵詈雑言を投げかけるパワハラ・モンスターが登場してくるが、恐らく仕事のノルマを今でも課せているだろうから、どのように指導をしているのかと疑問をいだいてしまう。
エンディングについて賛否があるだろうが、「温床」の深さを思うと含みをもたせた終わり方のほうが怖ろしさを醸し出すには良いのかもしれない。
価格:880円 |