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栗本薫 和田誠 ぼくらの時代 講談社文庫
カバー装画 和田誠

 

ぼく栗本薫。22歳、みずがめ座。某マンモス私大の3年生 ― バイト先のKTV局内で発生した女子高校生連続殺人事件をロック・バンド仲間の信とヤスヒコとで解決しようとするんだけど・・・・
若者たちの感覚や思考を背景に、凝った構成と若々しい文体によって推理小説に新風をもたらした第24回乱歩賞受賞作。(講談社文庫 裏表紙から)

 


 

ネタバレなしの読後感想

この小説を読んでみて、『小説も時代を映す鏡』だということを改めて思いました。
「今どきの若いもんは・・・」という意味の文字が刻まれた石板が、エジプトで発掘されたことがあると聞いたことがあるが、この小説の主人公である “ぼくら” も同様に、大人から「髪が長い」からと白い目で見られた時代に生きている。今から見れば滑稽とも思えるような話だが、昭和50年代前半はこれが常識的な考え方でした。
紅白歌合戦の選考に当時大人気だった沢田研二は何故か漏れていた。髪が長いせいだと言われていた。その当時だったらYOSHIKIさんの出場も叶わないだろう。

 

『名探偵コナン』を見慣れてしまったせいか、推理小説としては正直に言ってあまり満足できるものではないが、ことばのやり取りが軽快でとても楽しい。事件の現場となったテレビスタジオや舞台となった歌番組、アイドル歌手、追っかけファン、プロデューサーなどは、若者が心をひかれる対象の象徴であり、若者の象徴としての “ぼくら” と古い常識に縛られた大人の象徴としての刑事との間の会話は、どこか?み合わず面白さを醸し出している。
大人対若者の構図は古今東西を問わず存在しています。現代と比べて読んでみるのも一興だと思います。続編の『ぼくらの気持』と合わせて読んでみて下さい。

 


 

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