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<吉行淳之介さんの紹介>
大正十三年(1924)岡山市に生まれ、三歳のとき東京に移る。麻布中学から旧制静岡高校に入学。昭和十八年9月、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため四日で帰郷。20年東大英文科に入学。大学時代より「新思潮」「世代」等の同人となり小説を書く。大学を中退してしばらく「モダン日本」の記者となる。二十九年「驟雨」で第三十一回芥川賞を受賞。四十五年には『暗室』で第六回谷崎潤一郎賞を受賞する。主な作品『原色の街』『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』『夕暮れまで』、短篇に「娼婦の部屋」「鳥獣虫魚」等。(中公文庫から)
大学生だった私から見て、かっこいいモテそうなおじさんは、実際にモテたらしい。作風も、これでもかと笑いを誘い続ける遠藤周作とは一味ちがい、オトナの世界を感じさせられた。
悪友のすすめ
カバー装画 松野のぼる
遊びの達人が、スラプスティック式つまりドタバタ喜劇風に語る、小説家や漫画家、奇人怪人粋人、美女たちとのユーモラスな交遊。
麻雀パチンコ酒女、そのほか風変りなでおかしいエピソードを紹介しながら、人生の手ざわり豊かな、憂世の巷に爆笑、哄笑の花々をまきちらす洒落た本。(角川文庫 カバーそでから)
怪談のすすめ
カバー装画 松野のぼる
“現代の怪談”とはなにか? ユーレイやオバケは過去のものとなった。けれども今の時代にも、コワイ話はいろいろある。そしていちばんオソロシイのは、やはり人間である。
超能力・宇宙人・変身・整形・性病・コールガール・ラブホテル・同棲愛・ノゾキ etc.怪奇談風の事件をユーモラスに語る、36話のエピソード集。夏の夜におくるベストセラー・エッセイ「すすめシリーズ」の第4弾。(角川文庫 カバーそでから)
軽薄のすすめ
カバー装画 松野のぼる
“重厚”を良しとし、“軽薄”を軽んじる世の良識と風潮に対し、敢えて逆説的な発言を試みた軽妙にして達意の好エッセイ集。独自の諧謔と諷刺の装いの下に、キラリ、“当代の文士”の反骨が光る。世のこと、男と女について、幼時から青春時代の回想、交友、病気、身辺のことどもを語りながら、潔くすがすがしい。我知らず、微笑と共感を誘われ、愉しみながら勇気を与えられる書である。(角川文庫 カバーそでから)
焔の中
カバー装画 クレー 綱渡り師(ベルン美術館)
敗戦を二十一歳で体験した著者の、かけがえのない、文字どおり“焔の中の青春”の証言がここにある。不幸なまでに過剰な感受性を戦争の轍にふみにじられ、予想される死の影のもとでわずかに若い生命の火を暗く燃やす。親しい友は原爆で死に、一人、荒廃した焦土に若者は立つ。歳月をこえ胸に迫る著者の自伝的長篇。(中公文庫 裏表紙から)
<目次>
藺草の匂い
焔の中
廃墟と風
華麗な夕暮
ネタバレなしの読後感想
昭和19年春から終戦直後にかけて作者が体験したことと、その時に作者が感じたことを中心に描いている作品です。
敗戦となることが濃厚となり、作者自身も高校生の身でありながら徴兵されることになるが、軍国主義者を嫌う作者であっても、もうすぐに死ぬことを覚悟しながらも死ぬ確率が低くなることを喜ぶ。厭世的ではないが、死に対してどこか麻痺した状態がうかがえる。死を達観しているようでそうではない不安定さ、一般市民も死を現実のものとして受け入れざるを得ない戦時下と二十歳という年齢からくる作者のアナーキーな感じがこなれていない不安定さ、壊れやすさがどこか悲しい。
20年5月の空襲やポツダム宣言受諾についての記述は生なましく、もあり作者の眼と思考の確かさを十分に感じられる。
若い世代にもぜひ読んでほしいと思う作品です。
にせドンファン
カバー装画 和田 誠
Q大学英文科助教授花岡文雄、29歳。それが男の昼の顔である。彼には、ジキルとハイドの二つの顔がある。夜になると、そのために用意された部屋で変身し、華やかな都会の森へ密猟に出かける。OL、バーの女の子、マダム、看護婦、女子大生・・・・と、次々に関係してゆく彼は、エリートと狼の生活を楽しんでいるかに見えた。そして一見プレイボーイの彼を最後に待っていたもの、それはまるで悪い夢でも見たような復讐だった。女と別れ、夜の街をひとり歩きながら彼はつぶやく。「おれは、一体何者なんだ」
現代人の意識の中にひそむ二重性と願望を、都会的センスとユーモアで鮮やかに描きだした快心の長編小説。(角川文庫 カバーそでから)
面白半分のすすめ
カバー装画 松野のぼる
地面を這いまわるような青春時代でも、恋愛でムゴイ目にあっても、どこか“面白半分”風の余裕をもちたい・・・・。
戦争末期から終戦後の混乱期に過ごした自らの青春像を鮮やかな筆で描出した「青春放浪記」。他にユーモアと哀歓にみちた「酒場一夜一夜」「男と女の間」の二篇を収録。ベストセラー『不作法のすすめ』の著者が、平明にして達意の文章でおくる、滋味あふれるエッセイ集。(角川文庫 カバーそでから)
ネタバレなしの読後感想
著者が戦後に編集者となり、少しハメを外しかつ一所懸命に働いた頃が書かれた「青春放浪記」。酒場で見たり聞いたりした面白おかしいことが書かれた「酒場鮮や一夜」。女性ならびに女性とのお付き合いについて書かれた「男と女の間」。いずれも戦後の大きな変化の中での出来事や著者の所見を書いたエッセイであり、豊富な知識と経験が散りばめられています。
表題の『面白半分のすすめ』のとおりに、杓子定規なとらえ方を嫌い、どこかフワフワとしたような印象が楽しい作品です。
吉行淳之介文学館
掛川インターからいい加減行った木立の右手にあるのをようやく見つけた。
平屋建ての瀟洒な建物が落ち着いた雰囲気でたたずんでいる。いかにも「文学館」といった構えだ。
駐車場は建物に向かって左側にある。受付で入館料を払い “撮影禁止” を確認してから備え付けのスリッパに履き替えて館内を廻る。
吉行淳之介さんが執筆した部屋が再現されており、椅子の小ささに思わず笑みがこぼれる。よほど大事にされていたのだなと・・・
著書や、直筆の原稿、文学賞の賞状に加えて『焔の中』のカバー装画に使われているクレーの絵が飾ってあった。説明文によると吉行淳之介さんがお気に入りの画家だったそうです。
足を運んで損はありません。