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山本周五郎 朝顔草顔_2213
カバー装画 田渕俊夫

 

顔も見知らぬ許婚同士が、十数年の愛情をつらぬきとおし、藩の奸物を討って結ばれるまでを描いた『朝顔草紙』。徳川四天王、本田平八郎と同姓同名の臆病な青年武士が、戦場で名乗りをあげるたびに敵の第一目標とされ、あわてて逃げ出すという滑稽な設定の『違う平八郎』。いずれ劣らぬあわて者同士主従の不思議な心の通いあいを描いた『粗忽評判記』。ほかに『義理情け』など全12編。(新潮文庫 裏表紙から)

 

<収録>
・無頼は討たず
・朝顔草紙
・違う平八郎
・粗忽評判記
・足軽奉公
・義理なさけ
・梅雨の出来事
・鍔鳴り平四郎
・青べかを買う
・秋風の記
・お繁
・うぐいす

 


 

ネタバレなしの読後感想

 

予想どおりのハッピーエンドあり、あっと思わせるエンディングあり、“あとはご想像のままに” というように余韻をもたせた終わり方ありと、それぞれが山本周五郎らしい作品であり楽しませてくれる。時代も戦乱のときもあれば戦後の混乱期もありで、作者の見識の広さと器用さに驚かされる。
『青べか物語』につながる『青べかを買う』や『お繁』もいいが、『無頼は討たず』がお気に入りです。やくざの看板は侠気だとばかりに書かれた小説が多い中で、かたぎがヤクザのそれを上回る侠気を通すこの作品に、爽快さとともにヤクザに人生を振り回された男が感じたであろう “やるせなさ” を思う。作者の眼は暖かくもあり厳しくもある。そして、諦めや達観をも作品の中に感じることもある。
山本周五郎は、人の情緒を揺さぶる作家なのかもしれない。

 


 

山本周五郎さんの紹介
1903−1967年、山梨県生まれ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店の徒弟として住み込む。1926(大正15)年4月『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。『日本婦道記』が ’43(昭和18)年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。 ’58年、大作『樅ノ木は残った』を完成。以後、『赤ひげ診療譚』(‘58年)『青べか物語』(’60年)など次々と代表作が書かれた。(新潮文庫)

 


 

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