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筒井康隆 杉村 篤 ホンキイ・トンク 角川文庫
カバー 杉村 篤

 

調子っぱずれの音程の狂ったメロディ、これをホンキイ・トンクという。―ある日、とつぜん、コンピューター技師の腕前は二流以下のおれに、海外出張の事例が下った。安物のコンピューターを買い付けたバカジアに出向いて、設置するためだ。なにしろ、人口たった三万の小国だ。大国におもねた首尾一貫した政治は危険、という立場から、政策決定をコンピューターに決断させることになった。ところが、第一号の法律は、とんでもない頓珍漢な・・・・。
<機械>が主役となったおろかな人間社会をパロディ化した傑作。他七篇。(角川文庫 カバーそでから)

 

<収録>
君発ちて後
ワイド仇討
断末魔酔狂地獄
オナンの末裔
雨乞い小町
小説「私小説」
ぐれ健が戻った
ホンキイ・トンク

 


 

ネタバレ無しの読後感想

8つの作品からなる短編集です。現代、近未来、幕末、平安時代と種々の時代を背景とした作品は、書かれた当時(今も)テーマとなっていた問題をパロディやミステリー仕立て、ホラーにする手腕はみごとです。
「君発ちて後」は蒸発(理由がわからない行方不明になること)、「ワイド仇討」は題名どおりに仇討ち、「断末魔酔狂地獄」は長寿社会、「オナンの末裔」は男らしさが失われたと評されていた男性、「雨乞い小町」は小野小町が雨乞いのために歌を詠んだという故事、「小説「私小説」」は私小説の偽り、「ぐれ健が戻った」は・・・これは秘密にします、「ホンキイ・トンク」はコンピューター社会の危うさをテーマにして描いています。
個人的には「雨乞い小町」が好きです。小野小町を含めた六歌仙が、未来から来た“星右京”という男の手を借りて雨乞いを成功させるというSFですが、星右京という名前はSF作家仲間の星新一さんと小松左京さんを意識した名前であり、“眼鏡をかけたよく肥った男”というのだから小松左京さんに間違いないでしょう。
『時をかける少女』だけしか読んだことない方に特におすすめです。

 


 

<筒井康隆さんの紹介>
1934年大阪生まれ。同志社大学文学部卒業。主な作品に『大いなる助走』『虚人たち』(泉鏡花文学賞)『虚航船団』『夢の木坂分岐点』(谷崎潤一郎賞)『朝のガスパール』(日本SF大賞)『文学部唯野教授』「ヨッパ谷へ降下」(川端康成文学賞)『パプリカ』『わたしのグランパ』(読売文学賞)『銀齢の果て』『壊れかた指南』などがある。近年は、映画、演劇、テレビドラマなどにも出演、役者としても活躍。(角川文庫から)

 


 

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