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池波正太郎 玉井ヒロテル 炎の武士 角川文庫
カバー装画 玉井ヒロテル

 

時は戦国の世、各地に群雄が割拠し天下をとろうと争っていた、天正三年(1573)初夏。まぶしい太陽が輝く、三河の国・長篠城は武田勝頼の軍勢一万七千に包囲され、ありの這い出るすきもなかった。
 守るは、のろ牛のあだ名をもつ鳥居強右衛門の主君、奥平貞能の率いる兵、わずか五百たらず。たのみとする織田・徳川の援軍は到着せず、落城は時間の問題であった。
 そこで、この窮状を伝える決死の使者として名のり出た強右衛門は、厳重な包囲網を破り城を抜け出した・・・・。
悲劇の武士の劇的な生きざまを描いた表題作ほか三篇を収録した傑作集。(角川文庫 カバーそでから)

 

<収録>
炎の武士
色(いろ)
北海の猟人
ごろんぼ佐之助

 


 

ネタバレなしの読後感想

『炎の武士』は、徳川方についた三河の奥平貞昌の足軽として、長篠の戦いで武田勝頼が執拗に攻める長篠城を守るために名を残した鳥居強右衛門(とりい すねえもん)を描いた歴史小説です。自分自身の信念と思いを同じくする主君のために、不可能を可能とした題名のとおりに炎となって尽くした姿に、驚きと感動を覚えます。
NHK大河ドラマ『どうする家康』第21回放送「長篠を救え!」で岡崎体育さんが熱演されたのを観た方もいらっしゃると思います。
『色(いろ)』は、隊の綱紀を引き締めるために厳しい取締を行い隊内でも恐れられていた、新選組副局長・土方歳三が心を通わせた女性がいたことを記した小説です。題名と剛直な土方が合わないような気がしましたが、読み進むうちに “なるほど” と思わされます。
『北海の猟人』は、江戸時代の探検家・間宮林蔵を描いたものです。どのような時代背景があり、なにが彼を探検へと導いたのかがわかり、大変面白い小説だと感じました。
『ごろんぼ佐之介』は、新選組の隊士だった原田佐之助の狂気じみた若者から成長していく姿を描いています。
4つの作品に通じて言えることは、「どんな時代でも人は同じようなことをする」ということだろうか。

 


 

多くの時代劇の原作者となった、稀代の時代小説家です。
「必殺仕事人」、「鬼平犯科帳」、「剣客商売」がおなじみですが、主人公や登場人物に愛着がわくような人物設定が見事です。ですから、ともすればワンパターンになりかねない殺し、捕り物、剣劇のテレビドラマになっても、飽きがこないのではないかと思います。
歴史小説家としては、真田家を様々な角度から描いています。作者が、真田家について深く研究をした結果であることは、容易に想像がつきます。

 


 

<池波正太郎さんの紹介>
1923(大正12)年、東京に生まれる。1955年東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、60年第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。77年第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。作品に「剣客商売」「その男」「真田太平記」“必殺仕掛人”シリーズ等多数。

 


 

池波正太郎さん その他の文庫本

戦国幻想曲
英雄にっぽん
編笠十兵衛
まぼろしの城
あほうがらす
あばれ狼
剣客商売
侠客
おれの足音 上・下
剣客群像
闇の狩人 上・下
上意討ち
男振
闇は知っている
さむらい劇場
蝶の戦記 上・下
鬼平犯科帳 1
真田騒動 恩田木工
堀部安兵衛 上・下
忍びの女 上・下
梅安最合傘 仕掛人・藤枝梅安
殺しの掟
梅安乱れ雲 仕掛人・藤枝梅安
まんぞくまんぞく
むかしの味
剣客商売 陽炎の男
旅路 上・下
雲霧仁左衛門 前・後
江戸の暗黒街
忍者丹波大介
夜の戦士 上・下
忍びの風 一・二・三
忍者群像
火の国の城 上・下
剣の天地
食卓のつぶやき
仇討ち
剣客商売 新妻

 


 

池波正太郎記念文庫

 

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JR鶯谷駅からゆっくり歩いて20分ほどの所にある「池波正太郎記念文庫」。ガラス張りの台東区立中央図書館の1階の一隅にある。今年(2022年)が池波正太郎さんの生誕百年とあってか、公営の施設にも関わらず少し力が入っているように感じる。
入場は無料。撮影は禁止。著書、直筆の原稿などが場所柄か少し窮屈そうに展示されている。
池波正太郎さんが描いた絵もある。きっと短時間にササッと書かれたのであろうが味がある。
池波マニアは行くべきです。

 

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