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池波正太郎 中 一弥 まんぞくまんぞく 新潮文庫
カバー装画 中 一弥

 

深夜、覆面をして、酒に酔った侍に喧嘩をしかけては、髷を切ったり川に投げ込んだりして楽しんでいる男装の女剣士。それは、十六歳の時、浪人者に犯されそうになり、家来を殺された堀真琴の、九年後の姿であった。真琴は、敵討ちを心に誓って剣術の稽古に励んだ結果、剣を使うことが面白くて仕方なくなったのだが・・・・。女剣士の成長の様を、絶妙の筋立てで描く長編時代小説。(新潮文庫 裏表紙から)

 


 

多くの時代劇の原作者となった、稀代の時代小説家です。
「必殺仕事人」、「鬼平犯科帳」、「剣客商売」がおなじみですが、主人公や登場人物に愛着がわくような人物設定が見事です。ですから、ともすればワンパターンになりかねない殺し、捕り物、剣劇のテレビドラマになっても、飽きがこないのではないかと思います。
歴史小説家としては、真田家を様々な角度から描いています。作者が、真田家について深く研究をした結果であることは、容易に想像がつきます。

 


 

ネタバレ無しの読後感想

池波正太郎さんの時代小説に一貫としてある勧善懲悪と小悪への目こぼしがこの小説にもある。
自らを守るために、父代わりを担ってくれた家人を通りすがりの者に切られてしまい、か弱い少女だったにもかかわらず、仇を討つために剣術の稽古の末に力をつけたが、腕試しをするために悪さをするほどにはねっ返りになってしまうが、人との巡り合いにより気付き人としての歩みを取り戻すというストーリーです。
この小説にも、池波正太郎さんの小説『剣客商売』でおなじみの道場主金子孫十郎と井関忠八郎、そして佐々木三冬の名前が出てくる。同時代であることを示すとともにファンサービスであったのかもしれない。この小説の主人公も佐々木三冬も女剣士であるが、その描き方はまるで絵を見るように記されている。下女との戯れる様子。当時の武家の女性としての働きが務まらない様子などを読んで微笑みさえ浮かべてしまう。
肩のこらないライトノベルです。

 


 

<池波正太郎さんの紹介>
1923(大正12)年、東京に生まれる。1955年東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、60年第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。77年第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。作品に「剣客商売」「その男」「真田太平記」“必殺仕掛人”シリーズ等多数。

 


 

池波正太郎さん その他の文庫本

戦国幻想曲
英雄にっぽん
編笠十兵衛
まぼろしの城
あほうがらす
あばれ狼
剣客商売
侠客
おれの足音 上・下
剣客群像
闇の狩人 上・下
上意討ち
男振
闇は知っている
さむらい劇場
蝶の戦記 上・下
鬼平犯科帳 1
真田騒動 恩田木工
堀部安兵衛 上・下
忍びの女 上・下
炎の武士
梅安最合傘 仕掛人・藤枝梅安
殺しの掟
梅安乱れ雲 仕掛人・藤枝梅安
むかしの味
剣客商売 陽炎の男
旅路 上・下
雲霧仁左衛門 前・後
江戸の暗黒街
忍者丹波大介
夜の戦士 上・下
忍びの風 一・二・三
忍者群像
火の国の城 上・下
剣の天地
食卓のつぶやき
仇討ち
剣客商売 新妻

 


 

池波正太郎記念文庫

 

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JR鶯谷駅からゆっくり歩いて20分ほどの所にある「池波正太郎記念文庫」。ガラス張りの台東区立中央図書館の1階の一隅にある。今年(2022年)が池波正太郎さんの生誕百年とあってか、公営の施設にも関わらず少し力が入っているように感じる。
入場は無料。撮影は禁止。著書、直筆の原稿などが場所柄か少し窮屈そうに展示されている。
池波正太郎さんが描いた絵もある。きっと短時間にササッと書かれたのであろうが味がある。
池波マニアは行くべきです。

 

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