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北杜夫 串田孫一 幽霊 新潮文庫
カバー装画 串田孫一

 

「人はなぜ追憶を語るのだろうか・どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ」昆虫採集に興ずる少年の心をふとよぎる幼い日に去った母親のイメージ、美しい少女に寄せる思慕・・・・過去の希望と不安が、敗戦前後の高校生の胸に甦る。過去を見つめ、隠された幼児期の記憶を求めて深層意識の中に遡っていく。これは「心の神話」であり、魂のフィクションである。(新潮文庫 裏表紙から)

 


 

中学に上がると北杜夫や遠藤周作を読み始めた。北杜夫は『船乗りクプクプの冒険』を子供向けに書いているので、自然な流れのように『どくとるマンボウ』を冠するエッセイから『夜と霧の隅で』や『楡家の人びと』へと進んでいった。
思春期の入り口に立ったばかりの中学生にとって、学生生活や昆虫への興味を綴ったエッセイは、憧れをもって読まずにいられないほど魅力的だった。
時々テレビに出てくる北杜夫は、少しもっさりとした感じで、落ち着いた声でゆっくりと話す姿に好感を覚えた。今は文壇に立つ者がテレビの画面に出ることは稀だが、当時は多くの作家がテレビ番組に登場していた。作品だけでは満足できないファンにとって、嬉しいひと時だった。

 


 

<作家紹介>
昭和2(1927)年、東京生まれ。東北大学医学部を卒業。昭和35(1960)年、『夜と霧の隅で』で第43回芥川賞を受賞。『楡家の人びと』で第18回(1964年)毎日出版文化賞受賞。ユーモアのあるエッセイのほか大人も子供も楽しめる小説も数多く執筆。
平成23(2011)年没

 


 

北杜夫 その他の文庫本

さびしい王様
さびしい乞食
さびしい姫君
奇病連盟
夜と霧の隅で
どくとるマンボウ航海記
船乗りクプクプの冒険
遥かな国 遠い国
高みの見物
南太平洋ひるね旅
どくとるマンボウ昆虫記
親不幸旅日記
どくとるマンボウ追想記

 


 

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