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勝海舟(二) 子母澤寛 新潮文庫 

 

ネタバレ無しの読後感想

 

一巻に続き長崎の海軍伝習所でオランダの海軍士官などから勝麟太郎たちが学んでいくが、言葉の壁や今の時代でもあるような双方の他国人への蔑視からコミュニケーションが上手く取れなかったことがわかる。勝らは自分たちが命がけで学んでいることを態度で示してこの難関を突破する。
この巻を通しても多くの人たちが病に倒れ早世していったことが随所に書かれている。常に死が隣にいることが、この時代に生きた人たちの人生を濃くしていたのだろうと想像させられる。
この巻の主たるものは咸臨丸を日本人だけの操船でアメリカに行ったことです。航海中の困難さやアメリカ西海岸での滞在については勿論ですが、費用の捻出についても書かれています。今の時代にこんな事ができる人がいるだろうか、と思うほどの行動に感服します。後にアメリカに征服されるハワイのことにも触れています。
巻の末の方は将軍家持への拝謁と坂本龍馬、岡田以蔵らとの出会いが書かれている。勝が幕臣であるから当然なのかもしれないが、家持への思いは非情に強いものとして書かれているように感じる。幕府という組織への大きなこだわりはないが、徳川家に対する思いは特別なものだったのだろう。

 


 

<子母澤 寛さんの紹介>
明治二十五年(1892)、北海道に生まれる。本名、梅谷松太郎。明治大学法学部卒業。読売新聞・毎日新聞の記者をつとめた。昭和三年『新選組始末記』を出版。のち股旅小説を多数発表、『弥太郎笠』『菊五郎格子』『国定忠治』『すっ飛び駕』『駿河遊侠伝』などがその代表作。戦後は幕末遺臣と江戸への挽歌ともいうべき作品『勝海舟』『父子鷹』『おとこ鷹』『逃げ水』などを発表、昭和三十七年に
菊池寛賞受賞。随筆の名手として知られ、『ふところ手帖』(正統)のほか『愛猿記』『よろず覚え帖』などがある。昭和四十三年(1968)没。(中公文庫から)

 


 

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