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国定忠治 子母澤寛 新潮文庫 
カバー装画 杉本健吉

 

ネタバレ無しの読後感想

 

痛快なストーリーです。
国定忠治は、天保の飢饉で知られた江戸時代後期の天保の頃に、今の群馬県で多くの困窮していた人達を助けた実在した人物です。侠客(きょうかく)と呼ばれる男気のある人で、昭和の中頃までは誰でも知っているくらいに有名な人物です。
私が10歳くらいの頃だと思うのですが、テレビで見たてんぷくトリオが国定忠治をコントで演じていたことを思い出します。忠治を演じるリーダーの三波伸介さんが、刀を片手でかざして「赤城の山も今宵を限り・・・」という名台詞に対して、子分役の伊東四朗さんがトンチンカンな応えを繰り返すのを戸塚睦夫さんがオロオロと見守るというというコントだったと思う。コントからはヒーローを感じることはなかったが、・・・
この小説では、世話になった人が裏切られ死に追いやられ、その娘が売られてしまったものを探し救うという流れですが、男気の良さから敵(かたき)からも惚れられてしまうという男ぶりが描かれています。
とにかく文章のスピード感が心地いいです。忠治や子分たちの若さと心粋(こころいき)が漲っています。
こんな台詞があります「よしッ。みんな出てやれ、どうせ遠くァ行くめえ」。片仮名台詞に用いることを子母澤寛さんはよくされていますが、言葉が生き生きとしているように感じます。
エンディングは青春もののような爽やかさです。

 


 

<子母澤 寛さんの紹介>
明治二十五年(1892)、北海道に生まれる。本名、梅谷松太郎。明治大学法学部卒業。読売新聞・毎日新聞の記者をつとめた。昭和三年『新選組始末記』を出版。のち股旅小説を多数発表、『弥太郎笠』『菊五郎格子』『国定忠治』『すっ飛び駕』『駿河遊侠伝』などがその代表作。戦後は幕末遺臣と江戸への挽歌ともいうべき作品『勝海舟』『父子鷹』『おとこ鷹』『逃げ水』などを発表、昭和三十七年に菊池寛賞受賞。随筆の名手として知られ、『ふところ手帖』(正統)のほか『愛猿記』『よろず覚え帖』などがある。昭和四十三年(1968)没。(中公文庫から)

 


 

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