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子母澤寛 勝海舟(四) 新潮文庫

 

ネタバレ無しの読後感想

勝海舟が45歳の頃です。いよいよ幕府の力が衰えしまい、諸外国との交渉も国内の治安もままならず、気力も資金も失い無為な時間を過ごす幕府を尻目に気力と力を取り戻す長州と、長州と手を組んだ薩摩。将軍慶喜は大政奉還によって幕府を追い詰める動きをかわすが、これは旧幕臣の不平分子の行動の呼び水となってしまい、慶喜の思いとは違った結果となり鳥羽伏見の変へと至ってしまう。
このような中で、海舟は薩摩長州と通じている者として幕臣から白い目で見られてしまう。
海舟がやりたかった海軍の成長と充実が朝令暮改により、進められたり停滞したりを繰り返すことは海舟にとってどれだけ残念なことであっただろうか。
次男を亡くし、長男を留学に出した海舟の父親としての寂しさを共感するとともに、良き友良き師弟関係を持ったことによって、支えられ、諭されていく父親譲りの人間臭さに共感を覚え羨ましささえ感じる。下層の出であっても歴史に名を残した人物の努力・それによる人との出会い・人間としての魅力のようなものをこの小説から感じる。そして、自分の知恵に頼るのではなく、信じたことにトコトンこだわる生き方によって骨太な人生が与えられるのだということを学ばさられる。

 


 

<子母澤 寛さんの紹介>
明治二十五年(1892)、北海道に生まれる。本名、梅谷松太郎。明治大学法学部卒業。読売新聞・毎日新聞の記者をつとめた。昭和三年『新選組始末記』を出版。のち股旅小説を多数発表、『弥太郎笠』『菊五郎格子』『国定忠治』『すっ飛び駕』『駿河遊侠伝』などがその代表作。戦後は幕末遺臣と江戸への挽歌ともいうべき作品『勝海舟』『父子鷹』『おとこ鷹』『逃げ水』などを発表、昭和三十七年に菊池寛賞受賞。随筆の名手として知られ、『ふところ手帖』(正統)のほか『愛猿記』『よろず覚え帖』などがある。昭和四十三年(1968)没。(中公文庫から)

 


 

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