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松本清張 倉橋三郎 異変街道(上) 講談社文庫
カバー装画 倉橋三郎

 

幕府直轄の要衝、甲府勤番に役替えされたばかりの鈴木栄吾が死んだ。死んだはずの栄吾にあったという向両国水茶屋の主人が何者かに殺された。栄吾は生きている・・・・。親友、銀之助は真相究明のため甲府街道を西へ馳る。そのあとを女が、そして岡っ引きが、謎の影が追いかける。街道に異変がおきている・・・・。(講談社文庫 裏表紙から)

 

松本清張 倉橋三郎 異変街道(下) 講談社文庫
カバー装画 倉橋三郎

 

 隠れ里、台里の秘儀。甲府勤番支配の山根伯耆守江戸屋敷と甲斐を結ぶ面妖な青日明神祠の点と線。絵馬に記された謎の符諜―。甲斐武田氏の隠された金脈をめぐる欲望が、人々を陰謀と殺戮へとみちびいていたのか。栄吾の死をうたがう銀之助の目前で手がかりの糸はもつれ切断されて迷宮の深底へ引きずり込む。(講談社文庫 裏表紙から)

 


 

ネタバレなしの読後感想

江戸幕府の直轄後であった甲州を元とする出来事を描いた時代推理小説です。様々な出来事や人物が微妙に絡み合う設定に、読み進めれば読み進めるほどのめり込まされてしまいました。登場人物の描写もしっかりとしており、とても楽しめる作品です。
惜しいことには、結末が突然であり解決を喜ぶ記述も少ないため、「マラソン大会に一位でゴールしたにも関わらず、インタビューも無しにゴールの設営が片づけられてしまった」ような終わり方であるために、肩透かしをくったようになってしまいます。
解決するまでの経緯にあと5ページ、解決後の大団円にあと3ページが欲しいです。「週刊現代」に連載されていたものを出版したそうなので、もしかしたら与えられた紙数が足らなかったのかもしれないと思います。

 


 

「点と線」や「ゼロの焦点」などを書いた推理小説の大家ですが、私にとっては子母澤寛や海音寺潮五郎とならぶ歴史小説の作家です。
司馬遼太郎とは異なる松本清張の世界を本から味わって欲しいと思います。
また、その容貌から、小学生のものまねネタになっていたぐらい有名な人でもありました。

 


 

<松本清張さんの紹介>
明治42(1909)年、福岡県小倉市(現・北九州市)に生れる。昭和28年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。31年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。38年「日本の黒い霧」などの業績によりジャーナリスト会議賞受賞。45年菊池寛賞受賞。「点と線」「日本の黒い霧」「現代官僚論」「昭和史発掘」「古代史疑」など多方面にわたる多くの著作があり、「松本清張全集」(T期38巻、U期18巻、文藝春秋)が刊行されている。(文春文庫から)

 


 

松本清張さん その他の文庫本

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