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白石一郎 西のぼる 風雲児(上) 文春文庫
カバー装画 西のぼる

 

慶長15(1610)年、駿府で生れ育った伊勢山田の神主・山田仁左衛門長政は御朱印船で長崎を出港、高山国(台湾)から黄金の都シャムの女性と結婚し、国王の親衛隊として頭角をあらわし、やがて日本人でありながら、シャムの王族にまで登りつめた一代の快男児・山田長政の波乱の生涯を描く。(文春文庫 裏表紙から)

 

白石一郎 西のぼる 風雲児(下) 文春文庫
カバー装画 西のぼる

 

シャムに渡ってアユタヤの日本人町の頭領となった山田長政は内戦の鎮圧が国王に認められて、宮廷の武将としての頂点に立った。寛永6年(1629)年、リゴール国王となったが、翌年、毒薬で非業の死を遂げる。江戸時代、海を渡って異国で41年の生涯を終えた日本人山田長政の夢と冒険を描いた渾身の歴史長篇。(文春文庫 裏表紙から)

 


 

ネタバレ無しの読後感想

中学生の歴史の時間に名前だけが出てきた「山田長政」の半生を描いた小説です。16世紀末から17世紀初頭にかけて最も盛んだった朱印船貿易は、オランダの東インド会社の進出もあって大航海時代の最終期の中、航海術の進歩により多くの人種がしのぎを削る競争に置かれていた。関ケ原の合戦や大坂の役により主家を失った武士や一旗揚げようと大儲けを目論む商人もそれぞれの思いを胸に大挙して海外に渡り、そこかしこに日本人町が作られた日本にとっても大航海時代だった。
第二次大戦中に長政をアジアのために働いた人物として英雄視するようにされていたが、日本人の役割としての王宮警備の傭兵の頭目という点から見ると、果たしてどうなのかなという疑問がある。この小説では長政を体が大きく朴訥で正義感の強い男として描かれています。ストーリー展開に無理はなく、航海の困難さや海戦などの戦いも克明に描かれていますが、大きな信頼を集め、日本人を率いて王にまでなった男としてはもう少し物足りない人物像に思える。
同時代にルソンやカンボジアで呂宋助左衛門を描いた司馬遼太郎さんの書いた『黄金の日日』を一緒に読んでみるのも一興ではないですか。

 


 

<白石一郎の紹介>
昭和6(1931)年、釜山市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
昭和62(1987)年「海狼伝」で第97回直木賞受賞。
平成4(1992)年「戦鬼たちの海 ― 織田水軍の将・九鬼幸隆」で第5回柴田錬三郎賞受賞。
平成11(1999)年「怒涛のごとく」で第33回吉川英治文學賞受賞。
平成16(2004)年没

 


 

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