面白そうな文庫本を探す 綺麗な装画・イラスト

早乙女貢 忍法秘巻_2645
カバー装画 加藤孝雄

 

忍法達者たる楯岡ノ道順の高名を慕って一度はその弟子になった文吾だが、師の女志貴と恋に落ち、恩師の生命と女を奪って京へ逃げのびる。志貴はもと服部半蔵の女であったが半蔵が伊賀忍びの掟を破って徳川家康に臣従したため、師の道順から破門されるとともに志貴も道順に奪われたのだった。野望と復讐に燃える半蔵と文吾の決死の対決の時迫る!!(双葉文庫 裏表紙から)

 


 

ネタバレなしの読後感想

大泥棒、石川五右衛門として釜茹での刑を受けた忍者を描いた小説です。存在していたかどうかが、もう一つはっきりしない石川五右衛門にうまく命を吹き込んだなと、作者が施した設定の妙技に関心をさせられました。
標的となる秀吉のゲス男ぶり、ライバルとして立ちふさがる服部半蔵の執念と計算高さがあってこそ、主人公が行き来機と描かれているなとも感じます。
冷酷非情で非人間的存在として描かれることが多い忍者ですが、人としての恋心や憐憫などを持つ存在として描かれているので、話の展開はとてもわかり易いです。
残念なのは、途中で織田信長が伊賀忍者を攻めた「天正伊賀の乱」についての詳述や古文書に記されていることなどについて長々と記されている部分が少し煩わしく、話の腰を折られたような感じがしたので残念です。
忍者を描いた小説は山ほども多いですが、戦いの描写は幻術などを多用していないのでリアルで楽しめるものです。

 


 

<早乙女 貢さんの紹介>
1926(大正15)年元旦、中国ハルピンに生れる。本名鐘ヶ江秀吉。昭和43年「僑人の鑑」で第60回直木賞受賞。主に時代小説に健筆を振い、代表作に「奇兵隊の叛乱」「北條早雲」「由比正雪」など。数少ない山本周五郎門下生の一人である。(文春文庫から)

 

 


 

早乙女貢さん その他の文庫本

伊賀忍法
奇兵隊の叛乱
緋牡丹伝奇

page top