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遠藤周作 ヒサクニヒコ ボクは好奇心のかたまり 新潮文庫
カバー装画 ヒサクニヒコ

 

いかにもの好きといわれようと、いかに冷や水とけなされようと、生れつきの好奇心のムシはおさまらない ― 美人女優に面談を強要する、幽霊屋敷を探検に行く、上野の乞食氏と対談する、催眠術の道場を見物に行く、舞台熱が昂じて素人劇団を結成する、無謀にも運転免許に挑戦する etc、etc.。呆れるばかりのもの好き精神を発揮して狐狸庵先生東奔西走。珍妙無類のエッセー集。(新潮文庫 裏表紙から)

 


 

狐狸庵先生こと遠藤周作さんは、中学生から高校生にかけて、時に愉快であり、時に厳かな文章を与えてくれた。
中学生3年生の時に、こんなことがありました。夏休みの宿題に読書感想文の提出があったのですが、なんの打ち合わせもしていなかったのですが、友人と私が遠藤周作さんの『黒ん坊』の読書感想を提出したのです。それを知った時に、思わずニンマリとしてしまいました。
中高学生の頃は、どうしてもユーモアたっぷりの『ぐうたら』を冠する作品を好んで読んでしまったが、奥の深いテーマを持つ『海と毒薬』や『沈黙』は、読書の楽しさを教えてくれる。
さすが「違いがわかる男」。

 


 

ネタバレなしの読後感想

 

狐狸庵先生の真骨頂ともいえる本です。
幽霊や霊媒に、舞台やダンスにと好奇心と意欲に満ちた作者が体験と探索をもとに書いたこのエッセイ集は、出版当時に浪人だった私を憩わせてくれた。
『海と毒薬』などの小説を読むと、「同じ人が書いたのか?」と二重人格を疑うほどに異なる文章ですが、飾らず、砕けた感じがとても心地よい。佐藤愛子さんや阿川弘之さんらの作家との交流を知ることができるのも嬉しい。読後に何が残るわけではないが、なにか得した気がする。
思わず吹き出したり、ニンマリとしてしまうので、電車の中や喫茶店で読むことはお勧めできません。

 


 

<遠藤周作さんの紹介>
1923年3月27日東京生。慶応大学仏文科卒。学生時代から『三田文学』にエッセイや評論を発表。55年「白い人」で芥川賞獲得。66年「沈黙」により谷崎賞受賞。代表作「海と毒薬」「死海のほとり」他。

 

遠藤周作さん その他の文庫本

黒ん坊
ただいま浪人
ぐうたら人間学
狐型狸型
父親(上)
海と毒薬
深い河

 


 

 


 


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