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遠藤周作 深い河
カバー装画 小山 進

 

愛を求めて、人生の意味を求めてインドへと向かう人々。自らの生きてきた時間をふり仰ぎ、母なる河ガンジスのほとりにたたずむとき、大いなる水の流れは人間たちを次の世に運ぶように包みこむ。人と人のふれ合いの声を力強い沈黙で受けとめ河は流れる。純文学書下ろし長篇待望の文庫化、毎日芸術賞受賞作。(講談社文庫 カバー裏表紙から)

 

<目次>
一章 磯辺の場合
二章 説明会
三章 美津子の場合
四章 沼田の場合
五章 木口の場合
六章 河のほとりの町
七章 女神
八章 失いしものを求めて
九章 河
十章 大津の場合
十一章 まことに彼は我々の病を負い
十二章 転生
十三章 彼は醜く威厳もなく

 


 

ネタバレなしの読後感想

 

日本人の持つ宗教観を、ガンジス川を訪れた観光客一人ひとりに焦点を当てて描いた作品です。
けっこう厚い本なので読むのに骨が折れるかなと思いましたが、どんどんと興味を惹かれ一気に読んでしまいました。
八百万の神が生活に根付いている日本人のキリスト教に対する宗教観は、欧米のクリスチャンには理解しがたく受け入れられないものなのかもしれない。大多数の日本人は、日本武尊が神として自分自身に禍福をもたらすとは信じていない。ましてや明治天皇が神であると信じて明治神宮へ初詣に行っているわけでもないが、心の拠り所として “か細く” 息づいている。比べて、この本に書かれているヒンズー教徒の猛々しさはなんだろう。決して非科学的だとか未開の人のすることだとか笑うことができない力をガンジスの流れとともに感じられる。
作者は問う。神は無信心なあなたの内におり、ヒンズー教徒の内におり、クリスチャンの私の内におると。なのになぜ争うのかと。

 


 

狐狸庵先生こと遠藤周作さんは、中学生から高校生にかけて、時に愉快であり、時に厳かな文章を与えてくれた。
中学生3年生の時に、こんなことがありました。夏休みの宿題に読書感想文の提出があったのですが、なんの打ち合わせもしていなかったのですが、友人と私が遠藤周作さんの『黒ん坊』の読書感想を提出したのです。それを知った時に、思わずニンマリとしてしまいました。
中高学生の頃は、どうしてもユーモアたっぷりの『ぐうたら』を冠する作品を好んで読んでしまったが、奥の深いテーマを持つ『海と毒薬』や『沈黙』は、読書の楽しさを教えてくれる。
さすが「違いがわかる男」。

 


 

<遠藤周作さんの紹介>
1923年3月27日東京生。慶応大学仏文科卒。学生時代から『三田文学』にエッセイや評論を発表。55年「白い人」で芥川賞獲得。66年「沈黙」により谷崎賞受賞。代表作「海と毒薬」「死海のほとり」他。

 

遠藤周作さん その他の文庫本

黒ん坊
ただいま浪人
ぐうたら人間学
狐型狸型
父親(上)
ボクは好奇心のかたまり
海と毒薬

 


 

 


 


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